Marco Polo tagとAsia:Chapter5

Peggyとやって来たのは、Maxwell Food centreだった。

きっと、私が、Maxwellに行きたい行きたいとなんども口にしたせいだろう。気を遣って、Peggyが連れて来てくれたのだった。

 

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「ここのHainanese Chicken rice、食べたかったんでしょう。」Peggyは言う。でも、さっきの店でたらふく食べたお腹に空腹感は全くない。

前回、訪れた時に、この「天天海南鶏飯」の看板を見たときの感動は今回はなかった。

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幸い、まだ店は閉まって居なかった。食べようと思えば、Hainanese Chicken riceをオーダーすることもできた。でも、もうそんなものはいらない。

 

店の前のテーブルに座り、ぼんやりしていると、Peggyがまた、フードを持って来てくれた。

「これは何?」

「Rice Cakeよ。Chwee Kueh(水粿)と言うの」。これもシンガポールの名物料理の一つだった。

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ぷにぷにしたRice Cakeと辛いソースの組み合わせが絶品。東南アジアの暑い気候の中で食べるからだろう、ますます辛さが食欲をそそる。先ほど、chicken riceを完食したはずなのに、どうやら別腹のようだった。

食べているときに、Peggyはこれから夜にあうと言うsisterからの電話でずっと話し込んで居た。中国語で話しているので、何を会話しているのかはわからなかった。

食べ終えて、手持ち無沙汰になって閉まったので、まだ電話で忙しい、Peggyにちょっと待って居てと伝えて、このFood courtで見つけたかったことに取り掛かった。

 

このお店を再訪すること。おばちゃんにもう一度、再会して、egg tartを買うこと。それが、この地を訪れた理由の一つだった。

2年前にこの店を訪れて以来、ずっと、再訪したいと思っていたのだった。

www.cx251green.com

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人でごった返す、Food court 内をかき分け、記憶を頼りにこの店を探す。

見落とさないように、細心の注意を払って。

似たような食品を販売している店が多い。Food Court内を3周した。

 

でも、この店は見つからなかった。きっと、ここにあったはず、と言う場所は全く別の店に置き換わってしまっていた。

店の中をあまりに私がジロジロと見ていたものだから、店主の中国人のOBAさんに訝しがられる。

2年と言う月日はこの店への再訪を叶わなくさせるのに十分すぎる時間だった。

もう、この店はない。このおばちゃんに会い、このおばちゃんの作る、egg tartを食べると言う希望はついに叶わなかった。

 

もう、このFood courtには用はない。

 

Peggyの座っているテーブルに戻る。

ちょうど、Peggyは電話を終えたようだった。

 

「そろそろ、時間ね。これから、仕事終わりのsisterに会いに行くの。あなたはこれからどうするの?」

「もうちょっとだけ、シンガポールを堪能するよ。今度は自分の足で。せっかくだからGardens by the Bayにでも行ってみる」

 

「Peggy、日本に帰ったら連絡するから連絡先を交換させて」

「いいわよ」そのメモを大切に握りしめ、デイパックにしまう。

 

「Peggy、これあげる。今日のお礼」

私は Food court内で買った豆乳を差し出す。

「いいのよ。何も気を使わなくて。実は私、diabateを患っているから、これは飲めないの。」

「でも、今日、いろいろ付き合ってくれたのに、お礼らしいお礼ができていなくて…」

「ありがとう。せっかくだからもらって行くわ」そう行って、Peggyはトートバッグの中にしまう。

「じゃあ、そろそろ行きましょう」

 

Maxwell Food Centreから出ると、もう雨は止んでいた。傘は必要ない。

「Gardens by the Bayならここから、MRTに乗って行くといいよ。さっき、路線図あげたから、それを頼りに進みなさい。」

何線の何駅まで詳しく教えてくれた。メモ取らなくて大丈夫?となんども念押しされた。「大丈夫、ちゃんと覚えた。今度は、自分の足でたどり着けるよ」

 

「EZ LINKカード返すね。ありがとう」

「いいのよ。このカード使いなさい。私は何枚も持っているから」

彼女はやっぱり、頑なに受け取らない。彼女に返すことは諦めた。

「ありがとう」そう行って、カードをポケットにしまう。

(そして、今でもたいせつに保管してある)

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「わかった。じゃあ、ここまでね。良い旅を」彼女はsisterにあいに、横断歩道を渡って、MRTの駅へ歩く。その後ろ姿をが見えなくなるまで、じっと、見つめた。彼女の歩く姿を見つめながら、私は手を振り続けた。

 

彼女を見送ると、Brush wingのtagのついたデイパックを背負って、私は、MRTの駅へと向った。

 

スコールの上がった、シンガポールの空が茜色になりつつあり、この街に夕暮れ時の到来を告げていた。

(おわり)